【富嶽三十六景】葛飾北斎の名作シリーズを一気に紹介!
あけましておめでとうございます!
新年らしく、富士山シリーズの浮世絵を紹介したいと思います。
- 1. 富嶽三十六景とは
- 2. “北斎ブルー"ことベロ藍(プルシアンブルー)
- 3. 海外へも影響大!「エッフェル塔36景」
- 4. 「富嶽三十六景」全46作品を一挙紹介!
- 4.1. 1.神奈川沖浪裏
- 4.2. 2.凱風快晴
- 4.3. 3.山下白雨
- 4.4. 4.深川万年橋下
- 4.5. 5.尾州不二見原
- 4.6. 6.甲州犬目峠
- 4.7. 7.武州千住
- 4.8. 8.青山円座松
- 4.9. 9.東都駿台
- 4.10. 10.武州玉川
- 4.11. 11.相州七里ヶ浜
- 4.12. 12.武陽佃嶌(ぶようつくだじま)
- 4.13. 13.常州牛堀
- 4.14. 14.甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)
- 4.15. 15.信州諏訪湖
- 4.16. 16.遠江山中(とおとうみさんちゅう)
- 4.17. 17.甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)
- 4.18. 18.駿州江尻
- 4.19. 19.東都浅草本願寺
- 4.20. 20.相州梅澤左
- 4.21. 21.下目黒
- 4.22. 22.上総ノ海路
- 4.23. 23.登戸浦
- 4.24. 24.東海道吉田
- 4.25. 25.礫川雪ノ且(こいしかわゆきのあした)
- 4.26. 26.御厩川岸両國橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしせきようをみる)
- 4.27. 27.東海道江尻田子の浦略図
- 4.28. 28.相州江ノ島
- 4.29. 29.江戸日本橋
- 4.30. 30.江戸駿河町三井見世略図
- 4.31. 31.相州箱根湖水
- 4.32. 32.甲州三坂水面
- 4.33. 33.隠田の水車
- 4.34. 34.東海道保土ヶ谷
- 4.35. 35.隅田川関谷里
- 4.36. 36.五百らかん寺さゞゐどう
- 5. 追加された10枚!知る人ぞ知る"裏富士"
富嶽三十六景とは
富嶽三十六景は、さまざまな場所・角度・時間帯から見た富士山をテーマとした一連の風景画シリーズで、1830〜1833の3年間かけて制作されました。
「三十六景」と言いますが、実際には46枚あります。当初はタイトル通り36枚の予定でしたが、大変な人気で売れ行き好調かつ北斎も「もっと富士山を描きたい!」というモチベーションに溢れていたのため、さらに十点の追加になったそうです。
後から追加された10作品は、浮世絵好きの間で通称「裏富士」と呼ばれているようです。
当時、「富嶽三十六景」と並ぶ人気シリーズに歌川広重の「東海道五十三次」(こちらは全55作品。江戸時代の絵師自由すぎか)シリーズがあり、お互いに刺激し合うこととなりました。
“北斎ブルー"ことベロ藍(プルシアンブルー)
「北斎ブルー」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
富嶽三十六景の全46枚では、全てに紺青が使われています。
「ベロ藍」「プルシアンブルー」と呼ばれる鮮やかな青色は、はヨーロッパから持ち込まれた人工的な合成色素で、草木の色素を使っていた当時の日本にはかなりの衝撃でした。
海外へも影響大!「エッフェル塔36景」
パリのポスト印象派の画家、アンリ・リヴィエールは、ジャポニズムの影響を受け、北斎の富嶽三十六景のオマージュ作品として「エッフェル塔36景」を制作しています。
「富嶽三十六景」全46作品を一挙紹介!
さて、富嶽三十六景シリーズをの全作品を個人的な感想とともに紹介します!
1.神奈川沖浪裏
ザ・北斎!!!と言える1番有名な作品。かっこいい〜〜
図案になったりグッズになったりと今でも大人気です。
2024年の新千円札の裏側にも登場することでも話題になりました。
2.凱風快晴
よく晴れた日の富士山。鮮やかな青に赤が映える!
晩夏〜初秋でしょうか。いわし雲の表現も素敵。
3.山下白雨
個人的には富嶽シリーズの中で1番好きな作品です。
雷のシャープな表現がとってもかっこいい!
もくもくとした入道雲も迫力があって最高です。
4.深川万年橋下
シティな富士山。現在の東京都江東区です。深川めしの深川ですね。
「この人はアサリを採っているのかな?」など考えるのも面白いですね。
5.尾州不二見原
現在の名古屋の富士見町です。
全46作品のうち富士山から2番目に遠い所から描かれているそうです。
美術の教科書に大小遠近法の例として載っていたのを覚えています。
何故こんなにも大きな樽を作っていたのか謎です。樽といえばこちらの記事が面白かったのでぜひ読んでみてください。
6.甲州犬目峠
山梨県上野原市です。アースカラーで落ち着いてのんびりした雰囲気ですね。
7.武州千住
現在の足立区千住です。
大きな柱のようなものは堰枠(せきわく)と言って、隅田川の水が用水路に逆流しないためのものです。
8.青山円座松
現在の渋谷です。
江戸時代の渋谷は、武家屋敷が立ち並ぶ郊外でした。現在のように商業都市となったのは戦後からのようですね。
この面白い形の葉っぱは笠松で、当時の江戸名所の一つだったようです。
画中左下に、掃除をしている人の足が描かれているのに北斎の遊び心を感じます。
9.東都駿台
現在は予備校でおなじみの神田駿河台です。
武家屋敷のような立派な屋根が見えますが、当時この辺りは幕臣の家など武家屋敷が並んでいたそうです。
10.武州玉川
東京都府中の多摩川です。
水面の表現がリアルで、水への鋭い観察眼という意味で神奈川沖浪裏にも通ずるものがあります。
穏やかながら臨場感のある作品です。
11.相州七里ヶ浜
これはご存知神奈川県、鎌倉ですね。
大きな入道雲が夏らしさを感じます。人がいない、静かな夕方の風景です。
12.武陽佃嶌(ぶようつくだじま)
現在の東京都中央区佃島です。佃煮が有名ですね。
さて「佃島」の名前の由来ですが、大阪の地名から来ています。
徳川家康が幕府を開いた際、大阪から漁師たちを江戸に移住させたことで、この地は漁業の中心的な場所となりました。漁師たちの出身地、佃村にちなんで佃島と名付けたそうです。
13.常州牛堀
現在の茨城県です。
「富嶽三十六景」全作品のうち、最も遠い位置から描かれているそうです。
画中を占める青の多さが、寒そうな雰囲気を際立てています。
14.甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)
岩に打ちつけられる波飛沫がすごい。奥の大きく揺れていそうな水面の表現も素敵。
手前の岩・漁師・網(の縄部分)の三角形が、奥の富士山と相似している、という遊び心を持った作品です。
15.信州諏訪湖
長野の諏訪湖です。少し寂しい感じもしますね。
北斎は空気感を描くのが上手なんだと思います。
中央の松の木の細さや葉っぱの少なさ、少しくたびれた感じの屋根、ぽつんと一艘だけの舟がノスタルジックな雰囲気です。
16.遠江山中(とおとうみさんちゅう)
現在の静岡県です。
職人たちの声が聞こえてきそうな、また背景の煙ももくもくと大胆に立ち昇る勢いのある構図です。
17.甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)
現在の山梨と静岡の間あたりだそうです。
手を繋いで幹を一周しようとするも全然届かない人々も面白いですね。後の入道雲もユーモラスな形です。
18.駿州江尻
これは楽しい!2021年の映画、HOKUSAIでも印象的なシーンでした。漫画チックで面白いです。富嶽シリーズの中で個人的に欲しいなと思うのはこれが1番かも。笑
目に見えない風の動きをこれほどまでにリアルに表現できるのはすごすぎます。
突風にあたふたする人々と、どっしりと動じない富士山の対比が面白いですね。
19.東都浅草本願寺
おなじみの浅草寺です。
影を使わずとも立体感があるのがすごい!図形を描くのが上手いといいますか、影がなくともこれだけ立体感が出せるのはすごいと思います。初めて浮世絵を見た西洋の人が驚くのも納得!
20.相州梅澤左
富士山に鶴で縁起の良い組み合わせです。
人間がいないところも、より一層神聖な感じがします。
21.下目黒
当時、目黒は鷹狩の場としても有名でした。中央右寄りの、帽子を被った2人は鷹匠です。
控えめに頭を出した富士山も素敵。
22.上総ノ海路
これもかっこいい!
船の帆の三角形の間から見える富士山が最高!
水平線が弧を描いているのも、地球が丸いというのを示唆しているようで面白いです。
ちなみに、地球が丸いと日本で知られるようになったのは、 16世紀戦国時代、宣教師たちによって伝来されて以降だそうです。
23.登戸浦
こちらは千葉県の登渡(とわたり)神社です。
遊ぶ子どもたちや潮干狩りをする人で、のんびりほのぼのとした様子が伝わってきます。
24.東海道吉田
こちらは富士山から3番目に遠い場所から描かれているそうです。吉田宿は、現在の愛知県豊橋市に位置しています。
中央の看板の文字は「不二見茶屋」。富士山のよく見える茶屋として知られていたようです。
25.礫川雪ノ且(こいしかわゆきのあした)
現在の文京区小石川です。
江戸時代から、多くの武家屋敷や大名屋敷で栄えていたようです。
住宅街の雪というのは普段と違う特別感があって良いですよね。
26.御厩川岸両國橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしせきようをみる)
この富士山は面白いです。夕日で逆光なので、単色のシルエットとして表されています。流石すぎる!
武蔵、下総の両国に架かることから「両国橋」と名付けられました。
手前の波のうねり具合と細い線が秀逸です。
また奥の方の色を薄くすることで距離感が感じられます。
ちなみに両国橋は浮世絵の題材としても人気が高く、多くの作品が残されています。
27.東海道江尻田子の浦略図
現在の静岡県です。
田子ノ浦といえば、百人一首に「田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ(山部赤人)」という歌があります。確かに!富士の高嶺に雪が降ってる!
28.相州江ノ島
こちらは江ノ島ですね。
夕焼け空のオレンジが素敵。濃いコントラストでくっきり描かれた富士山が存在感を放っています。
波打ち際の白い飛沫の表現も面白いです。
29.江戸日本橋
戻ってきたシティ富士。
奥に見えるのは江戸城です。立ち並ぶ立派な建物、ぎゅうぎゅうの通行人の群れで溢れる橋の上と相まって、江戸の街の繁栄が見て取れます。
30.江戸駿河町三井見世略図
「三井見世」とは、江戸屈指の呉服屋、越後屋のことです。現在は三越でお馴染みですね。
大きな瓦屋根で、当時から栄えていた様子が伺えます。
これは余談ですが、江戸時代、越後屋は屋号の入った傘をお客さんに無償で貸し出すサービスを行っていたそうです。「江戸中を 越後屋にして 虹がふき」「ごふくやのはんじやうを知ルにわか雨」等、川柳も多く残されています。
31.相州箱根湖水
遊覧船で知られる箱根の芦ノ湖です。
新緑と山頂の雪が多めなので春でしょうか。この作品には人が描かれていない上、オレンジ色の霞雲も相まって神秘的な空気を感じます。
32.甲州三坂水面
こちらも好きな作品です。
真夏らしい深緑と、富士山の山頂に雪が積もっていません。対して水面に映った富士山はよくイメージする山頂に雪が積もったもの。
真の姿!って感じで面白い表現だなと思いました。
33.隠田の水車
現在の渋谷区神宮前です。
水車から溢れ出る水の表現が面白いです。
左下の男の子が持っている、紐に繋がれた亀がかわいいです。
34.東海道保土ヶ谷
神奈川県横浜市保土ヶ谷です。湘南新宿ラインですね。
草履の紐を結び直す駕籠かきや、手綱を引かれて歩く馬など、新緑の色も相まってほのぼのした空気です。
35.隅田川関谷里
颯爽と走る馬がかっこいい!!
躍動感のある絵がまだ珍しい時代だったので(国芳先生はザ・躍動感の神!って感じですけども)、さぞ人気だったのではないかと思います。
36.五百らかん寺さゞゐどう
WordPressを使ったことのある方、見たことありませんか?
人気の定番プラグイン「Contact Form 7」のロゴやヘッダーにも使われています。
追加された10枚!知る人ぞ知る"裏富士"
最後に追加された10枚がこちらです。
浮世絵好きの間では通称「裏富士」と呼ばれているようです。
37.身延川裏不二(みのぶがわうらふじ)
現在の山梨県身延町です。「みのぶ饅頭」でおなじみですね。
当時は甲州側から見た富士山を「裏富士」と読んでいたそうです。
38.従千住花街眺望ノ不二(せんじゅはなまちよりちょうぼうのふじ)
こちらもタイトルに千住と付くのですが正確には台東区のようです。
富士山と花街を背にして、大名行列の様子が描かれています。赤いものは袋に入れた鉄砲です。
39.駿州片倉茶園ノ不二
こちらは現在でも、お茶の名産地として知られる静岡県です。
静岡のどこなのか、確実な場所は分かっていないそうですが、茶畑で働く人々の様子に温かみを感じます。
40.東海道品川御殿山ノ不二
現在の東京都品川区です。
御殿山は当時桜の名所として知られていたようで、お花見を楽しむ人々が生き生きと描かれています。
富嶽三十六景の中で唯一桜が描かれており、華やかで優しい雰囲気の作品です。
41.甲州伊沢暁(こうしゅういさわのあかつき)
こちらは甲州街道の宿場町です。
明け方を描いた作品で、画中の人々も活気があるというよりまだ眠そうな感じです。
シックな色味でまとめられています。
42.本所立川
こちらは東京都墨田区です。
元気な職人の声が今にも聞こえてきそうですね。
43.東海道金谷ノ不二
現在の静岡県島田市で、タイトルの金谷は当時の宿場の名前だそうです。
画中の人々は大井川を渡っているところですが、当時は橋がなく、専用の籠や人力(肩車)で対岸へ渡してもらっていたようです。
44.相州仲原
現在の神奈川県平塚市中原です。
富士山の手前の、緑色の山は大山(おおやま)と言って、江戸時代には信仰の山となっていました。
当時の庶民には観光旅行が許されていなかったので、大山への参詣の旅は、許される数少ない旅の機会でした。「大山詣で」に向かう人々の楽しそうな様子が描かれています。
45.駿州大野新田
現在の静岡県富士市です。
時間帯は東の空が赤く染まる早朝と考えられます。
大量の葦を背負って歩く牛が軽快に描かれています。
46.諸人登山
富嶽三十六景の全46枚中で唯一、富士の姿ではなく富士山に登る人々の様子が描かれています。
自分は富士山に登ったことはありませんが、現在でも酸素や専用の靴など装備が要るのに、この時代にはさぞかし大変だったろうなと思います。