書評・レビュー「藤と日本人」ありそうでなかった藤尽くしの1冊

書評

藤と日本人

有岡利幸

八坂書房/2021/3/23

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またか、と思われるかもしれませんが、この本を選んだのは、鬼滅の刃関連です。

「鬼滅の刃」の作中で、藤の花は鬼の嫌うものとして描かれていますが、その理由は明かされていません。

そういえば藤を題材にした浮世絵も多いし、日本人と藤の花には深い結びつきがあるのかな、などと考えながら目次を見ると、第十章に「藤花は鬼を封じるか」と書かれているではありませんか。これは読まないわけにはいかないと手に取りました。

藤花は鬼を封じるか

まずは1番読みたかった部分の感想を書いていきます。

※著作権の問題と、ネタバレにならないように、内容は伏せていますのでご安心ください。

この本の著者の有岡利幸さんは植物・植生研究家をされている方です。

専門家の方が漫画の設定を本気で考察するって最高!「創作だから」で終わらせないところが好きなんです。

「鬼とは」「恐怖とは」「歴史・民俗学的に見て藤は何を意味するか」というところから始まり、鬼が藤の花を嫌う理由を科学的・民俗学的に考察されていて、とても面白かったです

もし、漫画やアニメの影響でこの章から読み始めても、章が終わる頃には藤と日本人や文化との関わりをもっと知りたいと一冊まるまる読んでしまうのではないかと思います。

藤や日本文化に興味を持つきっかけとなる、藤尽くしの一冊

「植物と日本人とのかかわり」を考えたときに、桜に比べ、今まであまり目を向けられてこなかった藤の花。

桜は古来より絵や歌の題材となり、現代でも春には木の下に人々が集まり、その美しさを写真で表現するなど今でも人気の高い植物です。

写真といえば、SNSなどの投稿を見る限り、今年は鬼滅の刃ヒットのせいか藤の花の投稿が例年に比べて多かったように思います。

満開の桜の美しさを、春真っ盛りを表す華やかで盛大なものとすれば、晩春から初夏に満開を迎える藤は季節としては割り切れない、不思議な美しさを持っていると言えます。

この本の冒頭部分は藤の生態や栽培方法、中盤では平安貴族と藤の花、藤花の絵のはじまりなど歴史に関すること、終盤には藤の名所、祭りや家紋など藤の民俗、鬼滅の刃での藤など、現代における藤と人とのかかわりが記されています。

本書は藤や日本文化に興味を持つきっかけになる一冊だと思います。

読みやすい文体で書かれていますが情報量は多いので、一気に読まなくても少しずつ読んでいくのもおすすめですし、章ごとに完結しているので興味のある箇所から読んでいくのも良いと思います。

そして最後に載っている参考文献の量もかなりあります。その中からまた新たに本を選んで読むのも面白いのです。

藤と日本人

有岡利幸

八坂書房/2021/3/23

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Posted by Yuhomyan