【初心者向け】忙しい人のための日本絵画史まとめ!(楽しさ重視)
「日本画に興味を持ち始めたけれど、一体何から見て良いのか分からない」
そんなみなさんに向けて、「日本画をもっと楽しむための」日本絵画史をできるだけ簡単にまとめました。
絵画史に載せるのに選んだ基準は
- とにかく美しい、面白い、かわいい!←最重要
- 美術館などに展示される機会が多い作品
です。
なので美術検定受験者や美術史を学問として履修されている方からすれば不満もあるかもしれません。
だけれど日本画がもっと好きになるような、素敵な作品たちを集めた楽しい日本絵画史にまとめたので是非見ていってください!
日本絵画、日本絵画史の楽しさはこれだ!
- 時代ごとに文化の担い手が変わる
- デフォルメ・デザイン的
- 豪華絢爛と侘び寂びの共存
時代ごとに文化の担い手が変わる
日本絵画の担い手は「遣唐使たち→貴族→武士→庶民」という風に変わっていきます。
絵を見て時代を想像するのも面白さの一つです。
デフォルメ・デザイン的
「本物そっくりにそっくりに描こうとしていない」
これも日本絵画の面白さです。
実際に見える世界ではなく、絵師が自分の見ている世界を創っているのが面白いです。
だからこそ、たまに出てくる本物そっくりな日本画がまた魅力的だったりするのです。
豪華絢爛と侘び寂びの共存
キラキラした壮大な作品も、墨絵のように侘び寂びを感じられる作品も共存しているのが日本絵画の面白さの一つです。
飛鳥・奈良時代
この時代のイベント
- 仏教伝来
- 遣唐使、遣隋使
- 唐の文化が流行
飛鳥・奈良時代の美術の特徴は、仏教テーマの作品が多いこと、唐の文化を追いかけた作品が多いことです。
絵画以外には大仏など仏像も作られました。
法隆寺金堂壁画
飛鳥時代に建てられた、法隆寺の壁画です。昭和期に火災にあってしまいましたが、アジアを代表する仏教美術です。
正倉院
正倉院は現代でも人気で、展示も割とよくやっています。
正倉院の宝物は、ほとんどが奈良時代に輸入または国内で製作されたものです。
正倉院について詳しくは以下の記事を参照してください。
※新潟で今もやっています。
平安時代
この時代のイベント
- 貴族社会
- 六道輪廻思想(浄土や地獄など死後の世界があるとする考え)の流行
- 絵巻物の流行
平安時代の美術の特徴は、日本独自の芸術文化が生まれることです。
また絵巻物がブームとなり、貴族たちは眺めて楽しみました。平安後期になると、病気や死、地獄など暗いテーマも書かれるようになります。
絵巻物
平安時代から、日本独自の芸術文化が発展していきます。
絵巻物もその一つで、有名なものに鳥獣戯画や源氏物語絵巻があります。
地獄草子
平安時代後期になると、人々の関心は美しいものだけでなく、病気や死、苦しみなどにも向けられるようになりました。
死後、生前の行いにより行き先が決まるという仏教の考え方、六道輪廻思想の流行に伴い、地獄を描いた絵巻も作られるようになりました。
鎌倉時代
この時代のイベント
- 武家社会
- 源氏と平氏の戦い
- 現実的な表現様式
鎌倉時代の日本美術の特徴は、現実的な表現様式です。貴族から武家社会に変わっていくので、芸術の世界でも力強い表現がブームになります。
鎌倉時代は彫刻ブームでもあり、有名なものに運慶・快慶の金剛力士像などがあります。
伝源頼朝像
絵画の面でも、写実的で凛々しい表現になっていきます。
長らく源頼朝像と伝えられてきましたが、最近では違う人を描いたかもしれないと言われています。
室町時代
この時代のイベント
- 武家社会
- 水墨画、やまと絵の流行
- 屏風絵や障壁画が描かれ始める
- 狩野派の誕生
室町時代の特徴は、中国から伝わった水墨画ブームです。また、水墨画の影響を受けつつ独自の発展を遂げた大和絵も製作されました。
後に400年続く狩野派が誕生したのもこの時代です。
水墨画
室町時代になると、日明貿易による中国文化の影響を受けて水墨画が本格的にブームになります。
中でも有名なのが雪舟で、力強い画風が人気です。
やまと絵
室町時代には、水墨画と並び、優れたやまと絵も制作されていました。
こちらは巡る四季を描いたやまと絵の屏風で、右隻に春夏、左席に秋冬が描かれています。
狩野派の台頭
後に400年続く狩野派が誕生したのもこの時代です。
特に、二代目狩野元信は、大きな障壁画を描き、狩野派の礎を作りました。
屏風絵や障壁画はこの頃から製作され始め、次第に発展していきます。
安土桃山時代
この時代のイベント
- 武家社会
- 豪華な絵画で権力を誇示
- 西洋との交易が始まる
安土桃山時代の絵画の特徴は、権力を誇示する豪華絢爛な表現です。屏風絵や障壁画など、大きな作品が多いのも特徴です。また西洋との交易も始まり、西洋画の影響も受け始めます。
狩野派最盛期
豪華絢爛で壮大な作品が得意な狩野派は、武家や将軍家から次々と仕事を任されました。
教徹底した教育体制により質が安定していたこと、一つの作品を複数人で仕上げる分業制をとっていたため、大きな作品も安心して任せることができました。
西洋文化の影響
スペインやポルトガルとの貿易も始まり、西洋画の技法やキリスト教的な考え方も入ってくるようになりました。
この作品はイエズス会の指導のもと、西洋画を学んだ日本画家が描いたと言われています。
江戸時代
この時代のイベント
- 天下統一後の平和な時代
- 庶民が文化の中心に
- 浮世絵の登場、琳派の発展
江戸時代は庶民が文化の中心となり、さまざまな新しい芸術が生まれました。
浮世絵や琳派、京都画壇など、現代でもトップクラスに人気の絵師や作品が多い時代です。
浮世絵
これぞ庶民文化の代表!アートというよりはメディアのイメージに近いです。
値段も手軽で種類も豊富で、当時の人たちは眺めたり集めたりして楽しんだようです。
初期の頃は色数も少ないですが、時代が進むにつれだんだんカラフルになっていきます。
木版画のイメージですが肉筆浮世絵もありました。
琳派の発展
「琳派」は流派名ですが、たいへん日本絵画らしさの詰まった流派です。
俵屋宗達の風神雷神をきっかけに、大胆なデフォルメや高いデザイン性が特徴の琳派が発展していきました。
琳派は作品数も多く、また現代でもとても人気が高いため展示やイベント、本なども多いので、気になった方は色々見てみてください。
独自路線を貫く京都画壇
若冲、応挙、蕭白など京都画壇の存在も忘れてはいけません。三名とも独自の路線を貫いた絵師たちです。
三者三様、画風は全く異なりますが、それぞれに魅力があります。
明治時代
この時代のイベント
- 文明開化
- 錦絵の発展
- 西洋画がやってくる!
文明開化で本当に大きく変わった時代です。
明治錦絵の発展
江戸時代に流行した浮世絵は、明治期になりさらに高クオリティになります。
背景には、版画技術の向上や、西洋から輸入された安価で発色の良い人工顔料などがありました。
江戸時代の浮世絵とはまた違った魅力があって面白いです。
岡倉天心の想い
新しく入ってきた西洋美術が流行する中、フェノロサや岡倉天心たちは日本画をさらに1段階押し上げられないかと考えます。
教育体制も整い、西洋画の技法を取り入れた新しいスタイルの日本画が育っていきます。
猫の毛並みは輪郭線を用いず、墨の滲みを生かしてやわらかさを表現しています。
菱田春草、横山大観らが考えた、輪郭線を描かない技法は、最初は日本画の世界ではあり得ないと批判されましたが、次第に受け入れられていきました。
大正〜現代
この時代のイベント
- 急速な近代化
- 戦争
- 画家の個性を重視
- 西洋画の多大なる影響
大正以降は、画家の個性が重視されます。
近代は資料もたくさん残っているし有名画家も新しい技法もジャンルも増え、一言で紹介するのが難しいです。
個人的には竹内栖鳳、速水御舟、上村松園、横山大観などが好きです。
山種美術館では多くの近代日本画を見ることができるので、機会があればぜひ行ってみてください。
今夏に京都で展示されるそうです!
日本美術史がわかるおすすめ本(初心者向け)
マンガになってる知識本系、実はあまり好きではないのですがこれは最初と最後と数ページだけ漫画で、あとは普通に絵の写真や画家の紹介なので楽しく読めました。
そしてこのサイズで全時代を網羅してるのすごいと思います。
もっと詳しく知りたい人へ
内容がとても充実しています!一気に読むのは大変ですが、日本絵画史について知りたい時に辞書みたいな感じで読むこともできます。それで少しずつ知識がついていくの楽しいですね。
私はこの2冊で日本絵画の歴史を知りました。
どちらもそれぞれ面白かったです!
ありがとうございました。