実はたくさんある!風神雷神図屏風巡りに行きませんか?
琳派と狩野派の記事でも紹介した、琳派を代表する作品・風神雷神図屏風!
風神雷神といえば、教科書にも載っていた俵屋宗達の絵が有名ですね!
だけど
風神雷神の絵、実は一つじゃないんです!
厳密には、あまり有名でないものなども含めたら大量にあるのですが、ここでは代表的な模写を紹介していきます!
風神雷神、これがオリジナル!俵屋宗達
- 作者:俵屋宗達(たわらや そうたつ)
- 制作年:17世紀前半頃
- 所蔵:建仁寺→京都国立博物館に寄託
- 区分:国宝
これがオリジナルです!
描いたのは、琳派の開祖・俵屋宗達という絵師で、制作の時期は17世紀前半頃です。
国宝にも指定され、もともと建仁寺にあったものが、現在は京都国立博物館に所蔵されています。
画面の両端ギリギリに配置された構図と、躍動感のあるポーズがとても特徴的です。
それに加えて重要なのが、二人の後ろに描かれた雷雲です。
これはたらしこみという、絵の具をぼかす技法で描かれています。
平坦に塗るのではなく、このぼんやりとした雲があることによって、二神の激しい躍動感に迫力を増すと同時に、何も描かれていないシンプルな背景に豊かな奥行きを作り出す働きをしています。
真ん中に余白を大きく取る構図も、奥行きを作り出す雲の表現も斬新で、見た人に大きなインパクトを与えたことと思います。
尾形光琳
- 作者:尾形光琳(おがた こうりん)
- 制作年:1711年頃
- 所蔵:東京国立博物館
- 区分:重要文化財
こちらは宗達の作品から約100年後、尾形光琳により制作されました。
国宝ではありませんが重要文化財に指定され、東京国立博物館に書状されています。
構図や表情、細部の形状など細かく模写していますが、光琳はただ正確に模写するだけでなく、独自のアレンジを加えました。
- 風神・雷神の姿が画面ギリギリではなく、全体像が画面に入るように配置されている。
- 宗達の画では二神とも視線を下界に向けているが、光琳の画ではお互いの目線が合っている。
- 屏風全体の寸法が若干大きい(宗達画は各154.5×169.8cm、光琳画は各166.0×183.0cm)。
- 二神がよりビビッドな色合いになっている。
- 輪郭線や雲の墨が濃くなり、二神の動きを抑える働きをしている。
光琳の絵の方が、色合いが現代的な感じがしますね。
尾形光琳の作品に、「燕子花図屏風」があります。
ここでもはっきりした色づかいなので、光琳は金色の背景にビビッドな色使いをするのが好きだったのかも知れません。
細部までよく見ていて、また自分なりのアレンジを加えたりもして、この絵が好きな気持ちがよく伝わってきます。
琳派の絵師たちは、直接の師を持たなくとも、好きな絵師の模写して学ぶこともありました。
これを「私淑」といいますが、この私淑によって、100年前の絵からも学びを得ることができたのです。
酒井抱一
- 作者:酒井抱一(さかい ほういつ)
- 制作年:1821年頃
- 所蔵:出光美術館
光琳の作品から100年後、光琳の模写をさらに模写した作品です。
1821年頃の制作とされ、現在は東京都の出光美術館に所蔵されています。
抱一は、宗達の描いたオリジナルを知らず、光琳の画が模写でなく独自に描かれたものとして考えていたそうです。
そのため原作からは少し離れた感じもしますが、二神のお茶目でユーモラスな感じが引き立っています。
色合いも優しそうな感じになって、雲の表現はむしろ原作に近づいています。
酒井抱一は「四季花鳥図巻」など優しい色合いの作品も制作しているので、自分の好きな色づかいにアレンジしたのかもしれません。
鈴木其一:酒井抱一の弟子
- 作者:鈴木其一(すずき きいつ)
- 制作年:江戸時代後期(19世紀)
- 所蔵:東京富士美術館
こちらは酒井抱一の弟子・鈴木其一によって江戸時代後期に描かれた作品です。
最初の風神雷神を描いた、宗達の時代から200年以上経っています。
今までの三人が屏風に二人を描いていたのに対し、其一は襖の表と裏に一体ずつ描きました。
色合いも、筆のタッチも柔らかくなって、広い画面をいっぱいに使い、軽やかに飛び回っている印象です。
似た感じの其一の作品では、「萩月図襖」があります。
柔らかい色合いや、余白のバランスが似ています。
まとめ:お気に入りの風神雷神を探してみては?!
以上!
風神雷神図まとめでした!
お気に入りの作品は見つかりましたか?
「私淑」という、好きな作品を模写する文化があるのも琳派の面白いところです。
機会が合ったらぜひ、それぞれの美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。